大阪中之島・未来医療国際拠点の整形外科クリニック

大阪中之島整形外科

〒530-0005
大阪市北区中之島四丁目3-51
Nakanoshima Qross 4階

06-6136-5222

再生医療&関節温存センター

ASC(脂肪幹細胞関節注射)

再生医療(脂肪幹細胞)の意義

変形性関節症(OA)は、加齢による関節の軟骨がすり減り変形を起こしてくる疾患で、荷重関節と呼ばれる股関節、膝関節、足関節に起こることが多く、中でも変形性膝関節症は、自覚症状を有する患者数が約1,000万人、X線上の診断による潜在患者数が3,000万人で、骨折を含む要介護・要支援となる原因の第一位となっていると言われています(H28年厚生労働省国民生活基礎調査より)。初期段階では明らかな症状はなくとも、関節軟骨や軟骨下骨などで炎症物質が産生され、やがてMRI等の画像でも認識できる状態から違和感や運動時疼痛や圧痛の症状出現、レントゲンで指摘される骨棘形成や重度の滑膜炎などへと進行します。

特に膝関節では関節の痛みにより日常生活動作(ADL)が制限されますが、これまでの変形性関節症の治療は鎮痛薬による疼痛の緩和、又は手術による人工関節置換が主流であり、本来の関節を再生に導く根本治療はありませんでした。

本治療法は自己脂肪組織由来間葉系幹細胞を関節内に投与し、変形性関節症を治療することを目的としています。

1.脂肪幹細胞

患者さまご自身の脂肪由来幹細胞を培養して関節に注射することで、脂肪由来幹細胞自体が関節軟骨を構成する軟骨細胞になる、脂肪由来幹細胞が分泌する成長因子などによって本来存在する軟骨細胞の活性化、関節内での炎症の抑制、関節液の産生等が促されます。結果として、関節の痛みなどの症状改善、日常生活で支障をきたしてしまう関節症状を改善し、その機能回復を目的としています。

なお、当院が委託している細胞培養加工施設では、動物由来の成分を一切使用しない安全性の高い「無血清培地」にて培養を行っております。他院において一般的には、動物由来の血清(血液中の成分)や、患者さまから採血(100~200ml 程度)を行って取得した血清が細胞培養に用いられます。動物由来血清や自己血清(患者さまご自身の血清)を用いる培養と比較し無血清培地を用いた培養は多くのメリットをもたらします。

2.治療の原理

変形性膝関節症への脂肪由来幹細胞の関節注射は、再生医療の一環として近年注目されています。この治療法の原理は、脂肪組織から分離・純化された幹細胞を患部、この場合は膝関節内に直接注入することにより、損傷した軟骨や関節の再生を促進することにあります。 脂肪由来幹細胞は多能性を持つため、様々な種類の細胞に分化する能力があります。これにより、軟骨細胞を含む関節組織の修復や再生が期待できます。さらに、脂肪由来幹細胞は強力な抗炎症作用を持ち、関節内の炎症を抑制することで痛みを軽減し、関節機能の改善に寄与します。

また、脂肪由来幹細胞は成長因子やサイトカインの放出を通じて、損傷した組織の自己修復メカニズムを活性化させることが報告されています。これらの成長因子やサイトカインは、軟骨細胞の増殖や分化を促進し、組織の再生を支援します。

脂肪由来幹細胞の注射は比較的安全な手法とされ、

3.脂肪幹細胞治療の安全性

脂肪幹細胞の関節内注入は、変形性膝関節症をはじめとする治療において安全性が高く、リスクが少ない治療法とされています。自己細胞を使用するため拒絶反応のリスクが低いという利点もあります。また当院の細胞はロート製薬で加工されます。特徴としては、従来の培養方法と違い動物由来の血清を用いず無血清培地での培養となるため、安定的に高品質な細胞を培養でき、病原性プリオン等の病原体感染のリスクや、動物由来成分によるアレルギー反応等のリスクがありません。

脂肪幹細胞による治療の流れ

  1. 同意の取得:治療を希望する患者に対し、実施医師が治療内容を説明し、文書による同意を得ます。
  2. 診察および検査:患者の健康状態を確認するために診察と血液検査を行い、治療を受ける資格があるかを確認します。検査にはB型肝炎、C型肝炎、HIV、梅毒などのウイルス検査が含まれます。
  3. 脂肪組織の採取:患者のおなかから脂肪組織(10g)を採取し、細胞培養加工施設に搬送して培養を行います。
  4. 創部の処置:脂肪採取後の創部が治癒するまで、定期的に創部の確認と処置を行います。
  5. 投与:採取した脂肪組織は細胞培養加工施設に搬送され、幹細胞を分離し、細胞数が一定の数になるまで培養します。その後、品質を確認する試験を経て、約6週間から8週間後に細胞培養加工施設から幹細胞が搬送されてきます。
  6. 細胞投与の可否判断:培養した細胞の品質検査後、実施医師が細胞投与の可否を判断します。判断基準には患者の容態や細胞の状態が含まれます。
  7. 細胞の投与:判断が提供可能であれば、凍結保存された細胞を関節内に投与します。1回の投与で約1500万個の細胞が使用されます。
  8. 予後検診:細胞投与後、1か月、3か月、6か月後に患者の追跡調査を含む様々な評価を行います。これには疾病の追跡、診察、痛みの評価(VAS)、機能の評価(KOOS)、画像診断などが含まれます。
  9. リハビリ指導:関節への負担を避けるための方法など、適切なリハビリ指導を行います。

このプロセスは、患者様の安全を最優先にしながら、再生医療を通じて関節の健康を改善するためのものです。

ロート製薬の細胞培養

ASC(脂肪幹細胞関節注射)ではロート製薬の細胞培養を使用します。
ロート製薬の細胞培養の特徴として、

  1. 無血清培地の使用
    細胞培養に動物由来の成分を一切使用しない安全性の高い「無血清培地」を使用し培養を行っているため、動物などの血液由来の感染リスクの減少が期待できる
  2. 幹細胞のモニタリング
    培養細胞に幹細胞が含まれているか適宜モニタリングの実施
  3. 中間体サービス(細胞保管サービス)
    1度の脂肪採取で、複数回の再生医療の提供を可能にするもあり、患者様の脂肪採取におけるご負担を軽減できます。
  4. 患者様の幹細胞の写真の提供
    患者様の幹細胞の状態を撮影・提供いたします。ご自身の細胞の状態をご確認ください。

をおこなっています。

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